STORY
幕末の江戸。
喧嘩に明け暮れる「バラガキ」だった土方歳三は、
近藤勇や山南敬助、沖田総司らと出会い
「試衛館」という初めての家族を得る。
そして江戸を騒がす辻斬り・岡田以蔵との死闘を通して、
無二の友情を築き再戦を誓う。
やがて大志を抱き京へ上洛した彼らを待っていたのは、
芹沢鴨の圧倒的な暴力と狂気。
そして抗いようのない時代の大きなうねりだった。
土方ら壬生浪士組は会津藩預かりとなるための過酷な試練を乗り越え、
会津藩主・松平容保からの信頼を得、京の治安を守る大義名分を得ることになる。
京はその頃、尊王攘夷派が暗躍し、
佐幕派の象徴・会津藩の志士たちが次々に斬られる戦場と化していた。
そんな中、家族と信じて疑わなかった仲間が、
裏切りの末に命を落とす……
土方は悲劇を乗り越え、会津狩り・田中新兵衛との激戦に臨み、
かつての「バラガキ」から「武士」へと成長していく。
一方、京を騒がせていたのは
人斬りと化したかつての友・岡田以蔵だった。
心を壊され「人斬り」と化した友・岡田以蔵との再会。
壬生浪士組副長としての使命と友情の狭間で葛藤する土方歳三は、
壮絶な死闘の末に以蔵の魂を救済する。
友との永遠の別れを経た土方は、
これ以上仲間を失わないため
自ら「鬼」となる決意を固め、
非情の掟【局中法度】を制定した。
しかし、その鉄の規律が引き金となり、
若き隊士が殺害される悲劇が起きる。
仲間の仇を討った永倉新八が
切腹を迫られることになり――。
事件の裏には、隊の乗っ取りを企む
副長・新見錦の陰謀があった。
真実を知った土方の怒りは爆発。
新見の粛清を決断するが、近藤派はわずか10名、
対する新見軍はで150名――
自ら死地に飛び込むような戦いが始まる。
その後、狂気を加速させる筆頭局長・芹沢鴨は
仲間である薩摩藩士を殺害。
会津藩主・松平容保は「芹沢か近藤、
どちらかの首を差し出せ」という
非常な判断を下し、これにより近藤派と芹沢派の
全面戦争が不可避となる。
決戦前、土方は芹沢との邂逅の中で、
己と芹沢を「光と影」と認め、
真正面からの対決を決意する。
決戦の地へ向かう中、土方の前に立ちはだかるのは
芹沢の右腕・平山五郎。
土方と平山の私闘を横目に、
天才剣士・沖田総司が芹沢の元へ向かう――。
芹沢と沖田、
まさに「最強」と「最強」の対決は熾烈を極め、
沖田は自らの内なる「鬼」を開放して戦いを続ける。
そこに深手を負った土方と近藤勇が駆けつけて――
最後の戦いが
ついに佳境を迎える!
「ちるらん」監督・渡辺一貴インタビュー
作品全体のビジョン ―
幕末という「日本で一番熱い時代」を描く
―まず、作品全体のビジョンについてお聞かせください。
渡辺一貴(以下、渡辺):時代劇というジャンルの一番の魅力は、現代劇に比べて感情の表現を豊かにできるところだと思っています。現代人が日々怒鳴り合ったり、大声で泣いたり笑ったりすることはあまりない。でも時代劇では、大きく感情を表現しても、オーバーに見えない。しっかりと喜怒哀楽を出すことが、くどく感じないジャンルだと思います。
しかも今回の『ちるらん』の舞台である幕末は、まさにそういう表現が似合う時代です。誰もが大きなパッションを持っている。日本の歴史の中で一番熱い時代だったと言えるかもしれません。太く短く命を燃やす瞬間が連続する緊張感。それを表現できるのがとても楽しみでした。
原作の『ちるらん』も、熱い男と男のぶつかり合いが魅力的に描かれている。実写化するにあたっても、その原作の力強さ、情熱を抑えず、むしろ拡大するぐらいのつもりで表現したい。それが一番大事にしていたことです。
歴史的忠実性と現代的エンタメ性の両立
―― 原作への忠実性と歴史的な忠実性、そしてエンタメ性。これらをどう両立させたのでしょうか?
渡辺:まさにそこが一番難しいところです。『ちるらん』原作の橋本先生、梅村先生は、歴史に精通されていらっしゃいますが、作劇に際してはあえて常識を超えてディフォルメしている。分かっているからこそ誇張できる。想像力を広げられる。その思いを大切にしなければと思いました。
例えば、当時存在しなかった武器を持っていたり、服装もかなり現代風だったり。そこがまさに『ちるらん』の魅力であり、読んでいるとワクワクするのですが、それをそのまま生身の人間で表現すると違和感が出てしまうかもしれない。だから、原作で表現されているキャラクターや設定の「本質」がどこにあるかを徹底的に考えて、それを実写に落とし込む。丸々再現するのではなく、一番大事なものを抽出して、ビジュアルに変換していく。そういう気持ちでやっています。
言葉遣いのバランス ― 時代劇らしさと『ちるらん』らしさ
―― 二次元作品の実写化で特に気をつけた点はありますか?
渡辺:一つは言葉遣いです。原作のセリフは現代風な言葉づかいも多く、幕末の日本人が使わなかったであろう言葉もたくさんある。それをそのまま実写のセリフにすると、時代感が失われてしまう可能性があります。
ただ、全てを当時の言葉に置き換えると、今度は『ちるらん』らしさが失われてしまう。なので、ベースは当時の言葉にしつつ、キャラクターの重要なセリフは原作のまま残す。そのバランスを取ることで、『ちるらん』のリアリティを作ろうとしています。
キャラクタービジュアル ― 「当時いたとしたら?」のラインを探る
―― キャラクタービジュアルの制作過程について教えてください。
渡辺:最初から確固たるビジョンがあってそこに向かうのではなく、一つ一つのキャラクターを作りながら、しっくりくるかこないかを感覚的に積み重ねて、全体をまとめていきました。
例えば、芹沢鴨の赤い髪の毛。当時、そんな人は100%いない。でも「いたとしたら」どんなものになるだろうと考えてみる。赤い染料自体は古くから存在していたし、古代エジプトなどでも髪を染める文化はあった。だったら、今の化学染料のような鮮やかな赤ではなく、植物性の染料で染めたらどういう色になるか。そういう議論を重ねて、理想の赤を探っていきました。その赤と地毛の混ざり具合や濃さは、綾野さんと相談しながら決めていきました。
芹沢鴨が吸っている巻きタバコも、当時の日本にはほとんど入ってきていなかった。でもヨーロッパでは吸われていたという記録があるので、何かの経路で日本に入ってきたものを鴨が手にしていた可能性はゼロではない。
こうやって、闇雲に現代のものを幕末に当てはめるのではなく、へりくつかもしれないけれど理屈を一つ一つ作って、その道筋を自分たちの中で納得してから表現する。その積み重ねです。
キャストとの共同作業 ― 「気持ちよく動ける場」を作る
―― キャストとのコミュニケーションで大切にしていることは?
渡辺:僕は基本的に、役者さんに細かい動きや感情の指示をあまり出しません。キャラクターの方向性を一緒に作り上げた後は、現場で大まかな動きを決めていく。その動きが正しければ、役者さんは気持ちよく動ける。気持ちよく動けたら、それはおそらく成功です。いかに気持ちよく動ける場を作るかが、自分の仕事だと思っています。
土方を中心とする新選組のメンバーは、撮影当初から一緒に過ごしているので、本当に家族のような関係性ができていった。現場で遠慮なく意見を交換し合ったり、俳優部だけで本読みをしたり。そこまで物語のことを考えてくれているのは、すごく嬉しいことです。
今回はスケジュールの都合でリハーサルの時間を十分に取れなかった分、衣装合わせの場が大きかったですね。1か月ごとに会って、お互いに勉強してきたことを持ち寄って話せる。それがリハーサルの代わりになりました。
ディレクターというのは結局、選ぶ仕事なんです。選択肢がないと仕事ができない。だから、役者さんにはどんどんアイデアを出してもらって、自分の考えとは違っても、面白ければ「こっちで行きましょう」と言える余地を大事にしています。
映像表現 ― ライブ感が生み出す必然性
―― 撮影や照明など、映像面でのコラボレーションについて教えてください。
渡辺:撮影監督の江崎さんも照明技師の三善さんも経験豊富で信頼できる方々で、ルックや撮影機材のチョイスについては、僕からのオーダーはほとんどなく、ロケハンや打ち合わせを通してフィーリングを共有しながら方向性を決めていきました。半年に及ぶ長い撮影なので、最初に決めたことが全てではない。ガチガチに固定せず、やりながら変わっていく方がいいと思っていました。美術チームも含め、現場で起きたことを楽しみながら臨機応変に対応してくれたスタッフの皆さんにはとても感謝しています。
例えば、芹沢鴨が亡くなるシーン。前半のアクションはリアルなトーンがベースですが、最後の瞬間は月明かりのような優しい光に包まれる。ああいう演出も、事前に細かく計算していたわけではなく、現場で少しずつ生まれていったものです。撮影前日にセットで役者さんと動きを確認した時に、鴨が死ぬ場所がだいたい決まった。それを撮影・照明チームが見て「ここで死ぬならこういう雰囲気はどうか」と提案してくれたのです。
鴨がお梅の三味線で舞う場面も、台本では小さな座敷で撮る予定でしたが、撮影を進めるうちに広い玄関ロビーで踊る設定に変わり、その姿があまりに素晴らしくて、その後の演出プランも自然と生まれていった。みんなのアイデアが少しずつ重なって、計算していなかったのに必然的にそうなった。そういうライブ感がとてもよかったと思います。
アクション演出 ― キャラクターが立ち上がる殺陣
―― アクション面での演出はいかがでしたか?
渡辺:アクション監督の園村さんが最初に出してくれたVコンテが、100%僕が思い描くキャラクターと合致していたんです。アクションの中にちゃんとそれぞれのキャラクターが散りばめられていた。そこから、アクションに関しては園村さんを完全に信頼してお任せしました。
衣装合わせでキャラクターができていったのと同じように、アクション練習を通じてキャラクターが出来上がっていったんです。それぞれの戦い方にしっかり個々の特徴が入っているので、練習しているうちに、いつの間にか土方が土方に、沖田が沖田になっていく。本番の撮影時は、僕はほとんどお客さんのように楽しんでいました。
激しさと緊張感がありながら、見ていて楽しい。温かみやユーモアがある。そのテイストが、『ちるらん』にとても合っていると感じています。
観客へのメッセージ ― 「散る前に、いかに咲くか」
―― 最後に、観客に届けたいメッセージを。
渡辺:とにかく、山田裕貴さんをはじめ、俳優部のお芝居が本当に素晴らしくて。ワンシーンしか出ないゲストの方も体当たりでやってくださっていて、本当に熱い物語になっていると思います。
『ちるらん』は「散る」物語ではあるんですが、散る前に、いかに咲くか。それがこの物語の本質だと僕は思っています。みんな大きな花を咲かせて、その後で散っていく。
この物語にメッセージがあるとしたら、そこだと思います。「僕たちは、こいつらみたいに熱く生きてるの?」と。見ていて、そう感じてもらえたら、この物語をやった意味があるんじゃないかと思っています。